救命士は病院でも活躍できる?《結論:できます》【元東京消防庁救命士・現役病院救命士が徹底解説】

病院

こんにちは、元東京消防庁消防士・救命士のきゅーぶです!

 

現在は某有名病院で病院救命士として勤務しています。

 

いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます!

 

今回は、「救命士は病院でも活躍できる?」がテーマです。

 

救命士といえば一般の多くの人は「119番通報を受けて救急車で出場する消防の救命士」を連想するかと思います。

 

実際に10年以上前は救急救命士の就職先といえば「消防」しか考えられないような時代でした。

 

救命士養成学校などでも「消防」で働くことを前提として教育されてきました。

 

しかし、時代は変わりつつあり、現在では徐々に病院救命士も増えてきています。

 

ですが、そんな救命士が果たして「病院」に就職して活躍できるのでしょうか?

 

結論から言うと

 

・・・できます』!

 

でも・・・

  • 実際、病院で何してるの?
  • 消防と病院どっちがいいの?
  • 他にも活躍できる職場はあるの?

 

こういった疑問に対し、実際に東京消防庁消防士・救命士として10年以上働き、現在は病院で働いているきゅーぶが徹底解説します。

 

実際、病院で何してるの?

消防では119番通報で呼ばれて患者さんを病院へ搬送するというのは誰しもがご存じかと思います。

 

でも病院では実際に何をしているのかわからないという方が正直多いのではないでしょうか。

 

そこで、病院で救命士は何をしているのか「病院内」と「病院外」に分けて説明したいと思います。

 

ただ、病院によって救命士の業務内容は様々で大きく異なることもありますので、あくまで一例として捉えてください。

 

病院内

救急外来

救命士の病院内での主戦場となる救急外来での業務です。

  • 自分たちで来た患者さんに待合室などで問診やバイタル測定などを行い緊急度・重症度を評価して診察優先順位を決める(ウォークイントリアージ)
  • 救急隊からの収容依頼電話対応
  • 医師や各部署(放射線科、ME科、検査科、薬剤科、医事課、病棟など)への連絡
  • 救急搬送されて来た患者さんやウォークイン患者さんの対応(具体的内容は下記白丸のとおり)
  • 問診
  • 各種バイタル測定
  • 12誘導心電図測定
  • 静脈路確保などの特定行為
  • 各種記録記載
  • 縫合処置(ナート)や骨折固定などの外科処置介助
  • 外科処置後のガーゼ処置や包帯処置
  • 膀胱留置カテーテル(バルーン)挿入介助
  • 血ガス測定
  • 血培、痰培、尿培など各種培養検体採取介助
  • 各種抗原検査介助
  • 血液検体などを検査科へ搬送
  • 簡易試験紙(通称:テステープ)による尿定性検査
  • 患者さんを画像検査室(レントゲン、CT、MRIなど)へ搬送
  • 更衣(病衣へ着替えさせる)やオムツ交換
  • 清拭などによる身体洗浄
  • トイレへの付き添い
  • 尿瓶による排尿介助
  • 差し込み便器による排便介助
  • 電気毛布やベアーハガーなどによる保温管理・・・など
  • 問い合わせ電話対応(受診相談や救急相談など)
  • 転院調整連絡
  • 診療情報提供書作成補助事務
  • 看護補助業務(器材の洗浄や消毒、物品員数点検、物品の補充、環境整備、シーツやタオルや病衣などリネンのクリーニング出し・・・など)
その他にも病院によって様々な業務があります。
 
ちなみに、きゅーぶが勤務している病院では発熱外来での問診やトリアージ、PCR検査関連業務、受診受付(チェックイン)業務、院内処方のお渡し、簡易会計業務などもしています。
 

一般外来、病棟

一般外来では看護師さんと同じように医師の診察補助や患者さんへの説明・ご案内・誘導など。

病棟では体位交換、食事介助、トイレ介助、バイタル測定、記録作成など。

※この項目についてはまだ情報が少ないため、より詳しい情報が分かり次第更新したいと思います。
 

その他

  • ICUやオペ室などで働いている救命士もいる
  • 救命士同士の勉強会
  • 看護師さんへの勉強会(トリアージ、気管挿管介助方法など)
  • 他職種への勉強会(BLS指導、災害時の対応など)
  • DMAT関連業務

 

病院外

ドクターカー

医師はもちろん乗りますが、他の同乗者は病院により異なります。看護師、救命士が同乗して事務員が運転などのパターンや、救命士が運転して医師と救命士のみ出場するという病院もあります。

 

基本的には消防の依頼により救急現場へ出場します。

 

救出に時間を要す場合など現場の救急隊からの応援要請で出場することもあれば、大きな事故や大規模災害などにより多数傷病者が発生し現場での医療介入が必要な時に出場したり、通報が入った時点でキーワード方式で出場するときもあります。例えば、電車への「飛び込み」や高所からの「飛び降り」、「路上でCPA」などの通報が入ればその時点で消防から出場依頼がかかります。

 

全ての病院がドクターカーを運用しているわけではなく、緊急車両を持っている比較的大きな病院が実施しています。

 

病院救急車

  • 転院搬送(自院から他院へ、系列病院から自院へ、診療所から自院へ・・・など)
  • コロナ陽性患者搬送(自宅から病院へ・・・など)
  • 救急出場(老人ホームなどの高齢者施設、一般住宅・・・など)

 

勤務先の病院によってまたは事案によっては救命士だけではなく、医師や看護師や事務員などが乗ることもあります。

 

救急出場に関しては活動リスクやマンパワー不足など色々な問題があるため実施できている病院は少ない。

 

その他

  • 救急車などの車両整備や運行管理
  • 市民へのBLS指導
  • 病院と消防との橋渡し的な連携役
  • DMAT派遣

 

消防と病院どっちがいいの?

救命士を目指している学生さんや転職を考えている救命士の方などは救命士として働く場所は消防と病院のどっちがいいのか気になるかと思います。

 

結論から言うと「何を重視するか」「どういう救命士になりたいか」によって人それぞれ変わるでしょう。

 

「やりがいを重視」「医療人として成長することを重視」「非日常の世界を重視」「救急車で活動することを重視」「給料を重視」「安定を重視」「他人とは違う経験を重視」・・・など様々なものがあると思います。

 

以下に消防と病院で働く際のそれぞれのメリット・デメリットを挙げますので就職先を決める参考としてみてください。

 

消防

【メリット】

  • 経済的に安定している
  • 大規模消防本部ほど給料がいい
  • 退職金がしっかりもらえる
  • 福利厚生がいい
  • 社会的信用が大きい(ローンが組みやすい、クレジットカードが作りやすい・・・等)
  • 救急車で救急隊として活躍できる
  • 都市部ほど出場件数が多く経験が積める
  • 消防士としても活躍できる
  • 組織的活動が学べる
  • 税金で研修を受けられる
  • 消防学校や研修中でも給料がもらえる
  • 24時間勤務のためまとまった休みが取りやすい
  • 非日常的な経験をすることができる
  • 体を鍛える設備がある
  • プロトコールがしっかりしている
  • 女性にとっては職場で異性との出会いが多い

【デメリット】

  • 地方消防や小規模消防本部ほど給料が安い
  • 地方に行くほど出場件数が少なく経験が積めない
  • 意外と事務処理が多い
  • 規律が厳しい
  • 消防士としても働かなければならない(二足のわらじ)
  • 医療だけに専念できない
  • 保守的な思考の人が多く向上心や挑戦心の高い人が少ない
  • 楽した者勝ちの思考の人が多く、面倒くさいことは若手に色々とやらせがち
  • 軽症事案やくだらない救急要請が多く、モチベーションの維持が難しい
  • 24時間勤務のため忙しい都市部ほど疲労が激しい(定年で退職するまで救急隊でいた人の平均寿命は60歳台という有名な噂があるほど)
  • 機関員になると夜中仮眠中に出場指令で飛び起きてすぐに運転しなければならない
  • 徐々に女性も増えてきたがまだまだ男性社会のため、男性にとっては職場で異性との出会いが少ない
  • 女性が働く環境としても徐々に改善されつつあるが、やはり男性が多いため男性の世界に慣れていない人はストレスになる場合がある
  • 基本的にバイトができない
  • 最悪、殉職する可能性もある
各自治体によって多少違いはあります。
 

病院

【メリット】

  • 働いているだけで様々な医療知識を日々得られる
  • 向上心の高い人が多く自分が成長する刺激になる
  • 医療に専念できる
  • 色々な職種の人達と仲良くなれる
  • 病院の内部事情がわかる
  • 胸を張って医療従事者と言える
  • 医師とのコネクションが作れる
  • 消防のような厳しい規律はない(身だしなみの自由度は高く、通勤手段は自由で、旅行届などの書類の提出も必要ない)
  • 消防と比べ男性にとって異性との出会いが多い(女性にとっても色々な職種の異性と出会える)
  • 消防のように24時間勤務ではなく、日勤・夜勤に分かれるため1日における肉体的負担が消防に比べ少ない
  • 消防のようにいつかかるかわからない出場指令を待つ緊張感や、重度精神疾患傷病者に対応することや、ホーム(病院)での戦いのみでアウェー(現場)で戦うことがないもしくは少ないなどの理由により精神的負担が消防に比べ少ない

【デメリット】

  • 給料が低い
  • 医療従事者としてまだ救急救命士の地位が低い
  • 転職が多い
  • 退職金が少ない
  • 全ての病院が救急車を保有しているわけではない
  • 救急車を保有していても転院搬送だけの運用が多い
  • 病院勤務の方は消防学校のような組織的な社会人教育を受けているわけではないので、社会人としての資質を疑うような人が少なくない
各病院によって多少違いはあります。
 

他にも活躍できる職場はあるの?

もちろんあります。

 

10数年前までは「消防」しか救命士が活躍できる場所がないと言っていいほど、ほとんど他で活躍できる場所はありませんでしたが、徐々に救命士を採用するところが増えてきて今では色々なところで救命士が働いています。

 

例えば、順番に具体的な場所を挙げていくと

  1. クリニック内や訪問診療(往診)
  2. 専門学校、大学、エルスタなどの救急救命士養成機関での指導者
  3. 民間救急搬送事業所(転院搬送など)
  4. 商業施設等救護所(「東京スカイツリー」や「USJ」など)
  5. 高齢者施設(特別養護老人ホームなど)
  6. イベント救護会社(ライブ、マラソン大会などの各種競技、海水浴場、その他各種催事での救護など)
  7. 自衛隊(衛生兵)
  8. 海上保安庁
  9. 医療機器メーカー
  10. フリーランス(ネットでの学習塾、医療知識等の情報発信など)

 

上記で挙げたところ以外にも救命士として活躍している方はいるかもしれません。それだけここ数年で救命士の職域は拡大してきています。

 

今まさに民間救命士の変革期と言えるでしょう。

 

しかし、消防であれば一定の知識・経験・スキルのレベルなどが保証されますが、民間の救命士であれば資格を取ってからずっと無職の方もいれば最前線でバリバリ働いてきて臨床経験豊富な方まで様々です。

 

そこで、一般社団法人 民間救命士統括体制認定機構(PMO)(旧:病院前救護統括体制認定機構)が民間救命士認定制度を実施しています。(こういった組織で働いている救命士の方もいます)

 

これにより、筆記試験・実習経験・臨床経験などの厳しい審査を受けて認定された救命士は一定以上の知識・経験・スキルのレベルなどが保証されます。

 

今後、転職で病院などに中途採用される際に、この「民間認定救命士」がひとつの指標となってくることでしょう。

 

今まで消防が中途採用をすることなどあり得なかったのですが、人材不足により地方の消防は中途採用で救急救命士を募集している自治体がいくつか出てきています。そういったところに応募する時などにもどれくらいのレベルかを証明するために「民間認定救命士」は強みとなるでしょう。

 

まとめ

救命士は病院でも活躍

・・・できます』!

  • 主に救急外来で働いていて、多職種と連携しつつ様々な業務に関わっている。医師や看護師がするような処置業務をしたり、介助をしたりする。救命士独自の業務もある。

 

  • 消防と病院のどちらが職場としていいかは「何を重視するか」「どういう救命士になりたいか」による。

 

  • 消防と病院以外にも救命士として活躍できる場所はたくさんある。

 

  • 民間認定救命士」を取得しておくと転職等で今後強みになる。

 

以上、「救命士は病院でも活躍できる?」でした!最後までお読みいただきありがとうございました!

 

 

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write by 宮部泰直

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